日本語書籍

重くて怖いのに何故か優しさを感じる

孤独の歌声 (新潮文庫)
天童 荒太
新潮社
1997-02-28



初めて読んだ天童荒太さんの作品です。

読み進めるのが辛くなる残忍な描写が度々出てきますが、読書中に感じていた恐怖感が読了と同時にすっと消えたことが不思議でなりませんでした。

理想の家族像を追い求めて猟奇的殺人を繰り返す犯人の犯行は決して許されないものですが、犯人が犯行に至った経緯からは、彼もまた被害者であることがうかがえます。親によって自分自身を奪われ、家族の愛を求め続けた犯人が語る家族の思い出話には背筋が凍るものがありますが、何故でしょうか、次第に犯人が不憫でならなくなってゆきます。

犯人の他、ミュージシャンを目指してコンビニのバイトに明け暮れる少年、若き女性警察官もまた、人にいえぬ心の闇を抱えており、孤独について考えさせられる作品でした。

先の展開が気になり、最初から最後まで一気読み。夜の9時に読み始めて、明け方3時に読み終えるまで止められませんでした。

この作品で印象的だったのは、社会で忘れられがちな人たち、異質と排除される人たちに対する優しい眼差しと理解でした。一律に考えず理解を示そう、一歩踏み込んで理解しようとしてみよう、と言われているような。犯人が犯行に至った経緯、被害者とその家族・友人たちが事件後に直面していくであろう傷口に塩を塗られるような、しかしそれは他の人にとっては何てことのない些細なことについて、もう少し想像力を働かせて考えてみようと語りかけているように感じました。

女性警察官が抱える過去のトラウマを想像すると、一生それから解放されないことの辛さがあまりにリアルで、同様の社会的な事件を思い出しては、あの事件のあの少女もこういう苦しみを抱えて生きて行かなければならないのか…と考え込んでしまいました。

しかし一番の衝撃は、犯人の孤独と真の家族愛への渇望。私には犯人の心の声が最も強く聞こえてきました。

中盤からさらに速度を上げて読み終えてしまったため、できればじっくり読み返したい作品です。

「銀行のしくみ」読了




この本は銀行の中で日々行われている業務について大変わかりやすく説明しています。
銀行がどのように収益を得ているのか、銀行の各窓口の業務、銀行員のキャリアプラン、本部・支店の各部署の1日の流れ、様々な金融商品などについて、初心者にとってわかりやすく書かれています。

特に役立ったのは本部の各部署の業務内容・役割、1日の流れをイメージできたことです。
これまで全くイメージできなかった銀行の中で行われている業務について、おぼろげながらその動きをイメージすることができました。成績をあげたい渉外係と貸倒れを防ぎたい本部審査部門との微妙な関係などなど。

名刺交換の際に、いただいた名刺に書かれている業種・部署名から、相手の仕事内容を具体的に想像することができず、話を広げられないことがよくあります。仕事では縁がなく、苦手意識の強かった金融分野について、本書のおかげでもっと勉強してみようという気になりました。

次の1冊として早速この本を購入し読んでいるのですが、こちらは難易度が一気に上がった印象。手を出すのは早かったかもしれませんが、もう少し読み進めてみます。


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